2009年、SI業界は何をすべきか

 SI業界は2000年頃まで続くITバブル期においては、各社ともトータル・ソリューション志向を強め、誰もが上流から下流まで、つまりコンサルティング・サービスから運用サービスまでをサービスラインに加えることにやっきとなった。これは、需要が拡大傾向にあったからこそ出来たことであり、求められるスキルだけでなく、ビジネスモデルすらも異なってくるこれらのサービス群を一企業で提供するのには非常な困難が付きまとう。結果として、ITバブル崩壊によりその矛盾が噴出し、その後5年間は非常に苦しい時期となる。各社ともトータル・ソリューションを志向した結果、特徴が失われ、案件獲得への指針が不明確となってしまった。そうした中、下落する売上を維持するために、闇雲な案件獲得に走った結果として、各社にて多くの不採算案件が発生する。
 その反省を踏まえて、開発リスクの管理を強化すると共に、自社の強みや方向性を明確にしてきたのがここ数年間であったと言える。
 グループ会社間の統合を実施し、事業効率の向上とスケール・メリットの享受を狙う動きが見られる一方、国内市場の成熟に伴い、海外へ成長の源泉を求めてM&Aを活発化させてきた。最近のオフショア開発による開発原価の低減は、一定のスケールを前提としており、規模を求めざるを得ない状況を作り出している。
 ニッチを攻める選択をする場合には、スケールによるコストメリットを補えるだけの特化したソリューション力が求められる。ノウハウ集約型の究極のモデルであるアプリケーション・ベンダーがオラクルやIBMなどに次々と買収されているのを見ていると、いかに黎明期にある分野へと特化していけるかがポイントとなる。これはこれで容易ならざる生き方である。
 顧客視点に立てば、こうした経済見通しの悪化は、IT投資をより変動費化したいというニーズに繋がる。これまで、特定の分野で進んで来たSaaSモデルへの需要が一気に高まるだろう。
 企業の価値というものが、その企業の生み出すであろう将来キャッシュフローによって決まるのであれば、現在のような信用収縮過程においては、あらゆる企業がその実力如何によらずその企業価値は減退する。
こうした状況においてこそ、その企業に残るビジネスというのは、その企業にしか出来ない付加価値ではないだろうか。その点においては、各社がどのようなビジネスモデルを採用しているかには依存しない。
 スケールとニッチという二元論には収まらない新しいビジネスモデルへの移行がある.SaaSのビジネスモデルは、グローバル・ニッチを可能とする形態と定義することも出来る。今後想定される新しい競争環境を認識した上で、これまでの路線を問い、正しければ進むべきだろう。
 急速な経済環境の悪化は、各社が過去の失敗を繰り返すリスクを孕む。売上や利益を維持するために、従来の路線には相容れないビジネス機会であっても手を出す可能性がある。そして、それは短期的に売上を上げたとしても付加価値の毀損であり、企業価値そのものを中長期では押し下げるものとなるだろう。一定の財務余力があるならば、ここでいかに耐えられるかが、これまでの構造改革の成否の試金石となる。

 今が 過去を反省して 新たな方向で 歩み始める時なのだ.